急性リウマチ熱とレンサ球菌感染後反応性関節炎 


版 2016
diagnosis
treatment
causes
Rheumatic Fever And Post-streptococcal Reactive Arthritis
急性リウマチ熱とレンサ球菌感染後反応性関節炎
リウマチ熱はのどにレンサ球菌(溶連菌)と呼ばれる細菌が感染した後に起きる病気です。レンサ球菌にはいくつかの種類がありますが、そのなかで、A群レンサ球菌と呼ばれる菌がリウマチ熱の原因になります。しかし、レンサ球菌は学童期にはよくある咽頭炎の原因菌であり、この患者さんの全てがリウマチ熱になるわけではありません。リウマチ熱によって体に炎症が起き、心臓が傷害されます。また病初期には少しの間、関節が痛くて腫れ、その後、心炎(心臓の炎症)が起きたり、脳の炎症により異常な不随意運動(舞踏病)がみられることがあります。また、皮疹や皮下結節がみられることもあります。 1
evidence-based
consensus opinion
2016
PRINTO PReS
1.リウマチ熱はどんな病気ですか?
2.診断と治療
3.日常生活
4. レンサ球菌感染後反応性関節炎



1.リウマチ熱はどんな病気ですか?

1.1 どんな病気ですか?
リウマチ熱はのどにレンサ球菌(溶連菌)と呼ばれる細菌が感染した後に起きる病気です。レンサ球菌にはいくつかの種類がありますが、そのなかで、A群レンサ球菌と呼ばれる菌がリウマチ熱の原因になります。しかし、レンサ球菌は学童期にはよくある咽頭炎の原因菌であり、この患者さんの全てがリウマチ熱になるわけではありません。リウマチ熱によって体に炎症が起き、心臓が傷害されます。また病初期には少しの間、関節が痛くて腫れ、その後、心炎(心臓の炎症)が起きたり、脳の炎症により異常な不随意運動(舞踏病)がみられることがあります。また、皮疹や皮下結節がみられることもあります。

1.2 よくある病気ですか?
抗菌薬がなかった時代には特に暑い国に多くみられました。しかし、抗菌薬が咽頭炎の治療に一般に使われるようになると、リウマチ熱の頻度は急に少なくなりましたが、5-15歳の子どもたちではそれほど頻度が高くないとはいえ心臓に障害を残す病気として、世界中ではまだまだたくさん見られる病気の一つです。 リウマチ熱では関節炎がみられるため小児期、青年期にみられる他の多くの関節炎を伴う病気と区別しなければなりません。リウマチ熱の課題の一つは世界中で地域差があることです。
リウマチ熱の発症頻度は国によって大きな差があり、全く症例がない国もあれば非常に頻度が高い国もあります(人口10万人に対して年間40人以上)。世界中では1500万人のリウマチ性心疾患の患者がおり、毎年28万2000人の患者が発症し、23万3000人が死亡していると推定されています。

1.3 リウマチ熱の原因は何ですか?
化膿性レンサ球菌、すなわちA群β溶血性レンサ球菌と呼ばれる菌がのどに感染し、異常な免疫反応が起きることが原因と考えられています。のどの痛みが先行し、しばらく無症状の時期があり、その後、リウマチ熱が起きてきます。
のどの感染には抗菌薬治療が必要で、これにより異常な免疫反応や感染症を予防します。レンサ球菌に再感染により、さらにリウマチ熱が悪化するからです。リウマチ熱は初発から3年以内は再発する頻度が高いのです。

1.4 遺伝する病気ですか?
リウマチ熱は親から子どもへ直接遺伝するような病気ではありません。 しかし、家族内でリウマチ熱にかかっている家族がいることはあります。これはおそらくレンサ球菌に対する特殊な反応する因子を遺伝的に持っている可能性があると考えられています。レンサ球菌感染自体は気道や唾液などから感染します。

1.5 何故、私の子どもが罹ってしまったのですか?予防できないのですか?
いろいろな環境因子やレンサ球菌の特定の菌がリウマチ熱を起きる重要な因子と考えられていますが、実際には誰がリウマチ熱に進展するかを予想することは出来ません。関節炎、心臓の炎症はレンサ球菌が持つ蛋白質に対する異常な免疫反応によって起きると考えられています。特定のレンサ球菌がリウマチ熱に罹り易い因子を持つ人に感染するとリウマチ熱が発病する頻度が非常に高くなります。人口密集地域に住むこともリウマチ熱が発症する重要な環境因子と考えられていますが、これは感染症が拡がり易いことが原因です。リウマチ熱の発症予防はレンサ球菌感染に対して迅速な診断と適切は抗菌薬治療(ペニシリン系が薦められています)を行うことです。

1.6伝染するのですか?
レンサ球菌咽頭炎は伝染しますが、リウマチ熱自体は伝染する病気ではありません。レンサ球菌は人から人へ拡がりますので大勢の人がいる家族、学校、スポーツクラブなどでうつってしまいます。レンサ球菌感染を拡げないために手をよく洗い、感染している患者との接触を避けることが大切です。

1.7主な症状は何ですか?
リウマチ熱ではいろいろな症状がみられ、これは患者さんにより異なります。これはレンサ球菌咽頭炎、扁桃炎に抗菌薬が正しく使われたかどうかにもよって左右されます。
レンサ球菌による咽頭炎、扁桃炎では発熱、咽頭痛,頭痛、のどの発赤がみられ、扁桃は強く腫れて表面は化膿性の分泌物が付着し、さらに首のリンパ節が腫脹します。しかし、これらの症状は年長児では軽いことが多く、無症状のこともあります。急性咽頭炎が治ると2-3週間は全く症状がありません。その後に発熱や次に述べるリウマチ熱の症状が出てきます。

関節炎
関節炎は数箇所の比較的大きな関節(膝関節、肘関節、足関節、肩関節など)に症状が出ることが多いのですが、1つの関節から別の関節に症状が移動します。これは移動性、一過性関節炎と呼ばれます。手首や首の関節が侵されることは稀です。関節の痛みは激しいのですが、腫れはあまり目立ちません。関節痛は一般には抗炎症薬で速やかに軽快します。アスピリンは最もよく使われる薬です。

心炎
心炎(心臓の炎症)は最も重大な症候です。安静時や睡眠時の動悸があるとリウマチ性心炎が疑われます。聴診で心雑音が聴こえると心炎が起きていることを意味します。心雑音は小さなものから大きなものまで様々で、心弁膜の炎症があることを意味し、もし心臓を包んでいる膜に炎症があれば、心膜炎と呼ばれる状態で心臓の周囲に液体が溜まっていることになりますが、ほとんどはそれ自体では無症状です。 最も重症な例は心筋炎で心臓のポンプとしての機能が低下します。この場合には咳や胸痛、動悸、頻脈、頻数呼吸などで気付かれます。循環器専門医への受診と精密検査が必要です。リウマチ性心弁膜症は初発のリウマチ熱の際に起きますが、繰り返しリウマチ熱に罹ることによる後遺症でもあり、成人になってから問題になることもありますので、とにかくリウマチ熱を予防することが必須となります。

舞踏病
"Chorea"という語はギリシャ語の踊るという意味に由来しています。 これは脳の協調運動に関係する部分の炎症が原因で起きる運動障害です。リウマチ熱の患者の10-30%にこの症状がみられます。関節炎や心炎と異なり 舞踏病はリウマチ熱の後期の症状で、通常は咽頭炎の1-6か月後に発症します。早期の症状は学童の年齢では不随意運動のために字が下手になった、着衣や身だしなみがうまく出来なくなった、また歩行困難や食事がうまく出来ないなどの症状が出てきます。異常運動は短時間なら止めさせることができます。睡眠中は消えていますが、ストレスや疲労が強い場合には症状は強くなります。学生では集中力が低下し、学力にも影響して、不安やすぐに泣き出すなど情緒不安定となります。 軽症の場合には、行動異常として見過ごされてしまいます。舞踏病は時間が経てば自然に軽快しますが、治療と経過観察が必要です。

皮疹
リウマチ熱では皮膚症状は稀ですが"輪状紅斑"と呼ばれる皮疹が出現し、これは赤い輪の形に似ています。また"皮下結節"は無痛性、可動性、粒状の結節で皮膚表面は正常で、多くは関節表面に見られます。これらの症状は5%以下にしか見られないため、また多くは軽症で一過性であるため見逃されているかもしれません。これらは単独に出るのではなく心筋炎(心筋の炎症)とともに見られることが多いようです。 その他の両親が気付く症状としては発熱、疲労感、食欲不振、顔色不良、腹痛、鼻出血などが発病早期に認められることがあります。

1.8この病気はどの子どもでも同じ症状が出ますか? 
年長児では心雑音が関節炎、発熱とともに認められられることが最も共通した症状です。年少児では心炎を認めますが関節症状が軽い傾向があります。
舞踏病は単独でみられますが、心炎が合併することもありますので循環器専門医による注意深い観察と検査が必要です。

1.9 子どもと大人で病気の違いがありますか?
リウマチ熱は学童や25歳未満の若い人の病気です。3歳以下では稀で、80%は5-19歳です。しかし、抗菌薬による再発予防が十分に行われないと高齢で再燃することもあります。


2.診断と治療

2.1 どの様に 診断するのですか?
リウマチ熱に診断に特異的な症状は検査法がないため、全身を注意深く診察することと検査所見の把握が重要です。診断を確定する臨床症状として関節炎、心炎、舞踏病、皮膚所見、発熱などとともに、レンサ球菌に対する臨床検査所見、心電図による心伝導障害の証明などが必要です。また診断にはレンサ球菌感染が先行した証拠を証明することが必要となります。

2.2 リウマチ熱に似た病気にはどのような病気がありますか?
リウマチ熱と同じようにレンサ球菌咽頭炎後に発症する"レンサ球菌感染後反応性関節炎"という病気があります。この病気では関節炎が長く続きますが心炎が起きる危険性は非常に低いと考えられています。抗菌薬による再発予防は必要です。 若年性特発性関節炎もリウマチ熱によく似た病気ですが関節炎は6週間以上続きます。 ライム病、白血病、レンサ球菌以外の細菌・ウイルス感染でも関節炎がみられます。 無害性心雑音(心疾患がないのに聴取される心雑音)、先天性心疾患、後天性心疾患もリウマチ熱と誤診されることがあります。

2.3 どんな検査が大切ですか?
診断とその後の治療経過をみるためにいくつかの検査が必要です。急性期には診断を確定するための血液検査が必要です。
他のリウマチ性疾患と同様に、舞踏病以外は、ほとんど全ての例で全身性の炎症反応が認められます。リウマチ熱は免疫反応によって起きるため、発症する頃にはすでに咽頭炎の症状はなく、レンサ球菌も消えています。 両親や患者さん自身がレンサ球菌感染の症状があったかどうか覚えていなくても、血液検査でレンサ球菌抗体を検出することが可能です。 これらの抗体は抗ストレプトリシンO(ASO)、抗DNAse-B抗体として知られている抗体で、2-4週の間隔で測定し、数値が高くなっていることを証明するとレンサ球菌感染の診断が確定できます。しかし、この数値の高さで病気の重症度を測ることは出来ません。 これらの抗体は舞踏病では正常値を示すことが多く、診断の参考にはなりません。 注:現在、日本では抗DNAse-B(deoxy-ribonuclease- B )抗体は測定されていません。  
ASOなどの血清抗体が高値を示すということは感染による抗体が作られたことを意味しますが、無症状で単にASOが高いからリウマチ熱と診断出来るわけではなく、従ってこの場合は抗菌薬の治療は不要です。

2.4 心炎はどのように診断するのですか?
心弁膜の炎症によって出現した心雑音は心炎が起きているという最も一般的な兆候で、これは医師により聴診器で聴取されます。 心電図検査(心臓の電気的状態を紙の上に描出します)で心疾患の程度を確かめます。 胸部レントゲン検査も大切で、心臓が拡大しているかどうかを診断します。
ドップラー心エコー検査、つまり心超音波検査は心炎の診断に重要な検査です。しかし、臨床症状がなければ診断に用いることは出来ません。 これらは全く痛みがない検査ですが、幼い子どもにとって検査中はじっと動かないようにしていなければならないのが苦痛です。

2.5 治療可能ですか、そして治りますか?
リウマチ熱は途上国では非常に大きな健康の問題ですが、レンサ球菌による咽頭炎が早期に治療できれば予防することが出来るのです。これは1次予防と呼ばれます。咽頭炎の発病から9日間、抗菌薬を使うとリウマチ熱の発症を予防することが可能です。 リウマチ熱の症状に対しては非ステロイド系抗炎症薬を使用します。
最近、レンサ球菌に対するワクチンが実験的に開発されました。つまりレンサ球菌感染を予防して、続いて起きるかも知れない異常な免疫反応を予防できないかという試みです。 将来、この様な方法でリウマチ熱が予防できるようになるかもしれません。

2.6 治療はどのように行うのですか?
最近数年間は新しい治療法は提唱されていません。アスピリンを中心とした治療が続けられていますが、その作用機序はまだ不明で、抗炎症作用によるものと考えられています。 関節炎に対してはアスピリン以外の非ステロイド系抗炎症薬を6-8週間、あるいは軽快するまで使用します。
重症な心炎に対してはベッド上の安静、症例によってはコルチコステロイド 薬(プレドニゾン)を2-3週間使用し、症状が軽くなり、検査結果が良くなって炎症が治っていることを確かめながら、徐々に薬を減量します。
舞踏病の場合には家庭と学校での個別な支援が必要です。 異常運動に対してはステロイド薬、ハリペリドール、バルプロン酸薬などを副作用に注意しながら使用します。 よくみられる副作用としては傾眠、体の震えですがこれは薬の量を調節すれば簡単に解決可能です。 治療が適切でも数か月間、症状が続く例もあります。
診断が確定した後は再発を予防するために、長期間の抗菌薬による予防投与が必要となります。

2.7 薬の副作用にはどんなものがありますか?
短期間の対症治療としてアスピリンや非ステロイド系抗炎症薬を使うことはほとんど問題はありません。 ペニシリンアレルギーの危険性は非常に低いのですが、初回の注射の際には 充分に気をつける必要があります。 ペニシリン注射は非常に痛いため、痛みの恐怖のため注射を拒否するかもしれませんので、病気についてよく説明し、局所麻酔薬を使ったり、注射の前には緊張を解いてあげることも大切です。

2.8 2次予防はいつまで続ける必要がありますか?
初発から3-5年間は再発の危険性が特に高く、心疾患を遺している例では再発するとさらに心臓の状態が悪化します。このため、この間はレンサ球菌の再感染を防ぐためにリウマチ熱の重症度と関係なく、軽症でも再発すると悪化する危険性があるため、抗菌薬予防投与が勧告されています。
ほとんどの医師は最終の活動性から最低5年間、あるいは21歳になるまで抗菌薬の予防投与を行っています。心炎があった場合には弁膜症を遺さなくても10年間あるいは21歳になるまでは2次予防を行うべきです。 もし弁膜症を遺していれば10年間あるいは40歳まで、また弁置換術後であればその後も予防投与が勧告されています。
心弁膜症を遺しているすべての患者は歯科治療、手術などの際には細菌性心内膜炎を予防するために抗菌薬を使用することが薦められています。 細菌は特に口の中から体をあちこち移動し心臓弁膜にも感染するためから、抗菌薬投与は非常に大切なのです。

民間療法・代替療法はどうですか?
沢山の民間療法があり、患者さんや家族は迷うことと思います。これらの治療法を試す場合にはその治療法の有効性があまり証明されていないこと、時間の無駄でもあり、経済的にも負担にならないかなど、その有利な点と不利な点について考えておることが大切です。もし民間療法について知りたければ、小児リウマチ医とよく話し合うことが賢明です。治療によっては今行われている治療と相対する可能性があります。 多くの医師は民間療法を受けることには反対はしないでしょうが、医学的な忠告には耳を傾けるべきです。 民間療法中は現在行われている治療は中止してはいけないこともあります。まだ病気の活動性が強い状態でステロイド薬のような活動性を抑える薬を中止してしまうと非常に危険になってしまいます。 薬剤に関する疑問は主治医とよく話し合ってください。

2.10 定期的な診察は必要ですか?
長期間にわたる経過観察と定期的な検査が必要です。特に心炎と舞踏病を伴っている場合には、注意深い診察が必要です。 急性期の症状が治った後は再発予防治療と、後になって心障害が出てこないか、循環器専門医と相談しながら長期に観察することが大切です。

2.11 リウマチ熱の疾患活動性はどのくらい続きますか?
急性期の症状は数日から数週続きます。しかし急性リウマチ熱が再発し、心疾患が遺っていればこれは生涯続くわけです。 そのため、レンサ球菌咽頭炎の再感染を予防するためも抗菌薬を長期間続ける必要があるのです。

2.12 リウマチ熱の長期予後は?
再発はいつ、どの程度に起きるか予測できません。 初発で心炎が合併すると心障害を遺しますが完全に治癒することもあります。 非常に重症な心疾患が遺った場合には心臓外科手術による心臓弁置換術を受ける必要が出てきます。

2.13 完全に治りますか?
心炎による弁膜症が遺らなければ、完治することは可能です


3.日常生活

3.1 この病気にかかったためにその子と家族にはどのような影響が出ますか?
リウマチ熱に罹ったのほとんどの子ども達は適切な治療と定期的な検診により通常の生活が可能です。しかし、心炎と舞踏病が合併した際には、家族の協力が必要です。
大切なことは長期間に及ぶ抗菌薬予防内服を続けることが出来るかどうかです。特に青年期の患者にはプライマリーケアーと再発予防の教育は非常に大切です。

3.2 学校生活はどのようにすれば良いのでしょうか?
心疾患の後遺症がなければ日常生活、学校生活には特別な制限もなく、全て の活動が可能です。 両親、学校の先生方は普通通りの学校活動に参加させるように協力しますが、これは学業だけでなく、友人や大人に対して礼儀や感謝の念なども学ぶ機会だからです。 舞踏病の急性期には学校生活が少し制限されることも予想されますので、両親や教師は1-6か月間は見守ってあげましょう。

スポーツは可能ですか?
全ての子どもたちにとってスポーツは日常生活で最も大切な要素の一つです。 治療の目的のひとつは出来るだけ普通の子ども達と同じ生活をさせることです。ですから全ての活動はできる限り参加させましょう。ただし、急性期だけは厳しい運動制限と安静は必要です。

3.2 食事で注意することがありますか?
食事が病気に影響することはありません。一般には年齢に応じたバランスの良い、普通の食事を楽しんでください。発達過程にある子供たちにはたんぱく質、カルシウム、ビタミンを十分に含んだバランスの良い食事が勧められます。ステロイド薬を服用している場合には食欲が増していますので食べ過ぎに注意です。

3.5 天候がリウマチ熱に影響することがありますか?
特別な影響はないと思います。

3.6 ワクチンは受けられますか?
ワクチンを受けて良いかどうかは、個々の症例によって異なります。一般にはワクチンによって症状が悪化したり、ワクチンの副作用が強く出ることはありません。しかし、多量の免疫抑制薬、ステロイド薬、生物学的製剤を使用している間は感染症の危険が強くなる可能性があるため、生ワクチンの接種は避けるべきです。不活化ワクチンは免疫抑制薬を使っている場合でも安全と考えられていますが、ワクチンの稀な副作用に関する報告が全て病気と関係しないと言い切ることもできません。
多量の免疫抑制薬を使用している場合、ワクチンによって抗体ができるかなどについては主治医に相談してください。

3.7 性生活、妊娠、出産に対する影響がありますか?
この疾患による性生活、妊娠、出産の制限はありません。しかし、何らかの治療を受けているすべての患者さんは、その薬剤の胎児への影響には注意しておかなければなりません。そのため産児調節・妊娠については主治医によく相談しておくことが大切です。


4. レンサ球菌感染後反応性関節炎

4.1 どんな病気ですか?
レンサ球菌関連関節炎は小児期にも青年期にも報告されています。通常は"反応性関節炎"または"レンサ球菌感染後反応性関節炎"と呼ばれています。
レンサ球菌感染後反応性関節炎は小児期では8ー14歳、成人では21ー27歳にみられます。咽頭感染後10日位から発症します。 リウマチ熱の関節炎は大きな関節に炎症がみられますが、レンサ球菌感染後反応性関節炎では大関節とともに小さな関節や第2頚椎にも炎症がみられます。 関節炎の持続時間もリウマチ熱より長く、2か月以上続きます。
微熱がみられ、血液検査ではCRP, 赤沈値などの炎症反応が陽性です。しかし、これらの反応はリウマチ熱の症例より軽度です。 レンサ球菌感染後反応性関節炎は先行したレンサ球菌感染の証拠があり、血液検査でASO, ADNsaseBなどレンサ球菌血清抗体が高値の関節炎で、急性リウマチ熱の症状・症候が"ジョーンズ基準"に適合しないことで診断します。
レンサ球菌感染後反応性関節炎とリウマチ熱では異なった病気で、心炎がみられることはありません。 最近、アメリカ循環器学会では発症1年間は再発予防のための抗菌薬使用とさらに心炎が発症しないかどうか、臨床的にも心電図検査でも、注意深く観察することを勧めています。 もし心疾患が出現した場合にはすぐにリウマチ熱として扱うべきであり、さもないと予防投与が中止されてしまう危険性があります。 また循環器専門医による経過観察が必要となります。


 
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